12.近代医学とエッセンシャルオイル
近代医学に於いてエッセンシャルオイルが再び注目されるようになったのは、19世紀末から20世紀初頭にかけてです。
第一次大戦中に、フランスの外科医モンシェール博士が殺菌と傷口の治療にエッセンシャルオイルを広く使用し、数種類のアロマ軟膏を開発するなど、一般の病院や野戦病院での使用が急速に広がりました。
アロマテラピーの父として知られているルネ・モーリス・ガットフォセ博士と弟子たちは1907年にエッセンシャルオイルの研究を始めており、1937年の著書『アロマセラピー』の中で、ラベンダーオイルが重度の火傷に効果があった事実を『化粧品を研究する科学者であったガットフォセ博士は、1910年7月、自身の実験室の爆発事故で炎に包まれてしまった。芝生に転がって炎を抑えた後、博士の両手は壊疽がどんどん広がったが、ラベンダーエッセンシャルオイルにさっと浸しただけで、組織の破壊が止まり、極度の発汗の後、翌日にはもう回復が始まっていた。』と語っています。
ガットフォセ博士の著書を20年間探していた「アロマセラピー国際ジャーナル」の編集長だったロバート・B・ティスランド氏は、やっと一冊発見することができ、1995年に復刻版を編集しました。
この時『ガットフォセ博士の火傷は深刻な感染症であるガス壊疽になりかねない重度なものだったに違いない』と語っています。
ガットフォセ博士は、研究結果を同僚であり友人であったパリの開業医ジャン・ヴァルネ医師にも見せていました。
第二次大戦中、中国のトンキンに外科医として従軍していたヴァルネ医師は、抗生物質の不足から医療用のエッセンシャルオイルを戦傷者の治療に用いたところ、感染に対して驚くべき効果を発揮し、多くの兵士の命を救う事ができました。
その後、ヴァルネ博士の二人の弟子が、エッセンシャルオイルのウィルス、細菌、カビ、感染に対抗する性質を臨床的に研究し発展させました。
1990年、フランスの医師ダニエル・ペノール博士と生化学者ピエール・フランコム博士は、270以上のエッセンシャルオイルの医療特性と臨床環境での使い方などをまとめた、エッセンシャルオイルの最初の参考書を共著で出版しました。
この本は、その後、エッセンシャルオイルの医療メリットについて執筆する世界中のライターの主な情報源となっています。
世界中の健康志向の人々は、高品質の天然ハーブを使用することの価値を学びました。
薬効を持つほとんどのハーブはエッセンシャルオイルに蒸溜することができ、有効成分が100〜10,000倍濃縮されているために、自然のハーブそのものよりも何倍も強力です。
しかし、処方薬と異なり、非常にまれにしか負の副作用が発生しない事から、なるべく自然な形での自分の健康を維持や回復を願う人たちが深い興味を示しており、現在、多くの科学者や医師が行っている研究でも、エッセンシャルオイルの癒しの力が再び注目を集めています。
ユタ州ウィーバー大学で行われた研究では、特にフェノール、カルバクロール、チモール、テルペンを多く含むエッセンシャルオイルがあると、ほとんどのウィルスやカビ、微生物は生存できませんでした。
これは、旧約聖書でモーゼが古代エジプトを襲った疫病からイスラエルの民を守るためにアロマ物質を使ったという記述の裏付けとなります。
また、15世紀に黒死病(ペスト)が大流行した時に、香辛料や香水の商人と知られる悪名高木盗賊団が、死者から所持品を荒らしながらも病に倒れなかった理由も解明できます。
歴史上の多くの例でも、エッセンシャルオイルを使う人は伝染病にかかりにくい事、さらに例え病気に感染しても回復が早い事を証明しています。
私たちの現代では、古代の世界が熟知していた「神の癒し」とも言えるエッセンシャルオイルの力についての発見が始まったばかりです。
現代医学の発展によってたくさんの命が助かり、身体の機能不全から救われ、奇跡が生み出されてきた事も事実ですが、SARSやエボラウィルス、エイズ、新種や変異種の細菌やウィルスなど現代医学だけでは未だ決定的な解決策が見出せない病も多くあります。
古代世界の医薬品であったエッセンシャルオイルと現代医学がリンクする事で、これらの病に対する新しい次元の発見と恩恵がもたらされる事を心待ちにしたいものです。
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