13.エッセンシャルオイル香りの影響

『香り』の研究は、今なお研究中とは言えますが、エッセンシャルオイルの香りは、感情の状態から寿命に至るまで、あらゆる事柄に直接影響を与えます。

【香りが重要な生理的、心理的な影響を与えるプロセス】

『香り』を嗅ぐ（吸入する）と、鼻の穴から入った空気中の香り分子が『嗅上皮』を通り『嗅覚』の中心へ移動します。

鼻腔の『嗅上皮』で『嗅覚受容体細胞』が誘発され『嗅球』に刺激を送信、多くの匂いを知覚することができ、その後、さらに『嗅球』は、『味覚センター』（味の感覚）、『扁桃体』（感情的な記憶を保存）、心拍数、血圧、呼吸、記憶、ストレスレベル、ホルモンバランスを制御する脳にダイレクトに接続されている『大脳辺縁系』など、脳の他の部分に刺激を送信します。

1996年、イタリアの科学者ルカ・トリノは、「『嗅覚受容体』は、それぞれの匂いの量子振動（異なる周波数）を感知することができ、それにより、人間はほぼ無限の数の知覚できる」という新しい匂いの理論を論文で発表しました。

この振動理論に付いては、まだ議論の余地は残されているものの、着眼点（アイデア）については否定できないと言われています。

【大脳辺縁系にダイレクトに繋がる香り】

私たちに備わっている『五感』のうち、『嗅覚』だけが、不安、恐怖、怒り、喜びの全てが発生する『感情の制御センター』である『大脳辺縁系』（本能の脳）にダイレクトに繋がっています。

特別な匂い『香り』は、私たちが意識的に認識する前に、記憶や感情を呼び起こします。（＝最初に匂いで反応し、後で考える）

例えば、包丁で指をシュッと切ったとき、ケガをした事、血が出てきた事を認識したその瞬間よりも遅れて『痛み』の感覚・反応がじわじわと発生しますが、腐ったものなどの匂いを嗅いだ時は、一瞬で『臭っ！』と拒否反応してしまう、火事やガス漏れなど一番にその異変の匂いに気づく、などのように、とても重要な自己防衛の役目をもっています。

嗅覚以外の感覚（触覚、味覚、聴覚、視覚）は、視床という脳の配電盤の機能をする所を介して経由されてから、意識的な思考センターである大脳皮質（考える脳）やその他の脳に刺激を送信されることから瞬間、遅れてそれとわかる、認識できる、となります。

また、ある料理の匂いを嗅いだ瞬間に、子どもの頃の一緒に食べた家族の風景や作ってくれた母親の思い出など遠い記憶が蘇ってきたり、過去の出来事に関係する匂いによって楽しい、悲しいなどの記憶とともに気持ち（感情）までも呼び起こします。

【大脳辺縁系】

脳梁（帯状回）／血圧、心拍数、呼吸器の調節、意思決定、共感、認知など情動の処理

海馬／短期的記憶や情報の制御、恐怖、攻撃、性行動、快楽反応。血液の流れが悪かったり、ストレスなどに対して大変弱く、PTSDやうつ病、アルツハイマーは海馬の萎縮から発症。

扁桃体／神経細胞の集まり。意識できない恐怖感、不安、悲しみ、喜び、直感力、情動の処理。ストレスの反応機構で、うつ病発症にも関与。海馬からの記憶情報をまとめて、それが

快か不快か、好き嫌いかを判断し、またその情報を海馬に送るというように、海馬と扁桃体は常に情報を行き来させています。

【アンチエイジングにも役立つ香り】

大脳辺縁系は、脳の最も重要な部分の一つで、体温、飢え、渇き、疲労、睡眠、体の多くの機能に影響する成長ホルモン、性ホルモン、甲状腺ホルモンなどのホルモン分泌、セロトニンなどの神経伝達物質の生産などを管理、コントロールする『視床下部』を直接活性化することができます。

エッセンシャルオイルの『香り』は、それぞれの独特の分子構造を通して、ダイレクトに『大脳辺縁系』と『嗅覚』の刺激に応答する『視床下部』に情報を送り、刺激する事ができます。

このようにエッセンシャルオイルの香りは、それを吸入し取り入れる事で、ストレスや心的外傷（PTSD）に対処できるだけでなく、視床下部からのホルモン生産を刺激して、エネルギーの源である甲状腺ホルモンや若さや長生きの源である成長ホルモンを増加させる事ができます。（＝アンチエイジング）

【体重コントロールにも役立つ香り】

エッセンシャルオイルの香りが刺激する『視床下部』には、食欲を減少させ、食後の満腹感を支配する働きもあるため、エッセンシャルオイルを満腹感を増加させるために使う事もできます。

ペパーミントを含めた香料を用いて、過去にどのタイプの体重管理プログラムにも成功したことのない3,000人以上の患者を集めて大規模な臨床試験を行った結果、アロマ吸入器の利用頻度と体重減少量は相関していました。（アラン・ハーシュ医師が実施）

純粋なエッセンシャルオイルは、単なる香水やリラクゼーションのためだけに利用できるものとして片付ける事は大変もったいない事です。

植物の叡智である何百もの成分で成り立つ各エッセンシャルオイルの複雑さと価値の理解を深めて毎日の暮らしにもっと取り入れる事は、なかなか自然と接する機会が少ない、ストレス社会で過ごさなければならない、という環境で生きる私たち現代人にとって心にも体にも大きな助けとなってくれます。

エッセンシャルオイルは、その昔、私たち人間が大自然の中で生活していた頃には大いに受け取っていた『自然の中で得られていた恩恵を蘇らせてくれるもの』だと思います。

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